2025年2月  2.高額な医療費

 「高額療養費制度」は、医療費を一定金額以下にとどめるための、健康保険法などに基づいた社会のセーフティネットです。この制度による負担の上限額を2025年から2027年にかけて段階的に引き上げることが、先日決定しました。引き上げの幅は年収によって異なるものの、これまで以上に負担が増大することにより、長期療養中の人にとっては治療の回数を減らして生活の維持を図る、といった選択をとらざるを得ない状況が生じることになりそうです。
 近年の医療は日進月歩です。今や2人に1人はがんに罹患するといわれていますが、治療方法も薬も開発が進んで、死の病というイメージが薄れつつあります。しかし、治療も薬も価格が上がっており、化学療法による点滴治療を受けると3割負担でも1回12万円もかかる、というようなケースも多々あります。その治療が2週間に1度必要だとされている標準治療のガイドラインがあったとしても、上限額の引き上げによって、治療の回数を減らす以外に生活を維持する道がなくなってしまう事態になりかねません。まさに死ぬか生きるかの問題なのです。
 教会は、2月11日に「世界病者の日」を迎えます。それに際して発表されている教皇メッセージを読むと、導入にある一文に目が留まります。
https://www.cbcj.catholic.jp/2025/02/05/31434/
 「からだが重い病気で弱っているとき、そして、その治療には払えそうもない高額な費用がかかるときに、わたしたちは強くあり続けることができるでしょうか。」
 お金で命を買うことができる社会に向かって突き進んではいないでしょうか。臓器の提供、特に腎臓の売買が、人身取引の目的のひとつになっています。保険診療が許可されていない新しいがんの治療を行うと、数百万円の負担にもなります。医療はすべての人に公平になされるべきものですが、経済力が弱いことによって命が削られてしまうことのないように、万人に開かれた医療の実現のために、心を込めて祈りをささげてまいりましょう。