2025年3月 3.離婚

今月の教皇の意向は「危機に瀕する家族」です。もうやり直すことがゆるされない人生だけが残されている、といった閉塞的な環境で、ややもすると互いに傷つけ合って結婚生活を続けている夫婦にも、互いの人格を認め合って、互いを思い合って、やり直すことを認め合う道が開けていることも、大切なことではないでしょうか。
『カトリック教会のカテキズム』2384項には、「離婚は自然法に反する重大な罪です。それは、夫婦が死に至るまでともに生きると自由意思をもって同意した契約を破棄しようとすることです。離婚は、秘跡による結婚が表す救いの契約を侮辱するものです」と記されており、カトリック教会の掟では離婚を厳しく禁じています。
一方で、一般的には基本的人権のひとつとして婚姻関係を解消することが法的に認められており、日本の民法では、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つの道を設けています。
協議離婚は夫婦間の話し合いによって合意成立し、離婚届を提出するだけで成立します。調停離婚は家庭裁判所で調停委員を通じて話し合いをすることで成立させ、離婚条件を決める方法です。審判離婚は、家庭裁判所の調停が不成立となった場合に、離婚の条件を家庭裁判所が判断(審判)して決める方法ですが、当事者が異議を申し立てた場合には審判の効力が失われてしまうことから、この手続きが用いられることはほとんどありません。裁判離婚とは、調停が不成立になったり、審判に異議が申したてられたりした場合に、家庭裁判所に訴訟を提起して、裁判上の手続きで離婚する方法ですが、このために「法廷離婚事由」があることが条件となります。
カトリック教会の掟だけではでなく、法的に保障された基本的人権についてもしっかりと認識することは、キリスト者として大切なことです。まずは、夫婦間のさまざまな問題で苦しんでいる方々に思いをいたし、その関係が寛容と謙遜の営みの中で平和への道に進むことができるように祈りましょう。そしてまた、やり直すことへと、神が導き促しているかどうかを識別することができるように祈り、そして、支えてまいりましょう。何よりも、それぞれの人格が尊重されるようにと祈りましょう。